Vol.1

adidas OriginalsのSTAN SMITH

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こんにちは。今日から縁あってfigureでコラムを書かせて頂くことになりました。

 

小澤匡行です。よろしくお願いします。2016年に「東京スニーカー史」(立東舎)、2017年には日本語版「SNEAKERS」(スペースシャワーネットワーク)を書かせていただきました。

 

前者はスニーカー関係者たちによる東京のカルチャー変遷の証言本、後者はナイキやアディダスなどデザイナーや世界のヒップなショップを中心としたインタビュー本です。

 

どちらも文字ばかりですが、興味があれば是非、読んでみてください。前置きが長くなりましたが、ここでは自分自身とスニーカーの関係について、

たまには主観的なお話ができたらと思います。

 

僕が人生で最も同じモデルを買い続けたのは、アディダス オリジナルスのスタンスミスでした。初めての購入が15歳なので、着用歴はもう四半世紀になります。

 

「普遍」より「普通」な言葉が似合う、どこの量販店でも買えるスタンスミスから、フランス製の白×グリーン、アメリカ製の黒×白、モロッコ製の白×サックス。

 

色々と買いましたが、それぞれに魅力がある不思議なモデルでした。年齢とともに価値観も変容し、ガソリンスタンドのつなぎ(勤務していたのがグリーンだったので)から、二次会のスーツの足元(マーク・ジェイコブスの着こなしに憧れて)まで、これほどマルチなスニーカーに出会ったことはありません。たしか2012年だったか、「スタンスミスが生産中止になる」とアディダスの人に聞き、慌ててスタンスミス80sを11足買い占めました。

 

靴を大切にすることも、履き潰すことも覚えたシューズ、それが僕にとってのスタンスミスです。

 

買い漁った二年後の2014年にリローンチされた時は、喜び半分、拍子抜け半分でしたが、もちろん購入。

 

以来、周囲の盛り上がりを察するに本当の意味でアイコンになったと思います。なんだかんだで毎年買い続けていると、ディテールの変化に気づきました。

 

2014年製の少し暗い、グレーがかったレザーはあまり好みではありませんでしたが、2016年製のスタンスミスの革の質感は、白さが増し、光沢が控えめになり、歴代の中では理想的な白でした。サイドに「STAN SMITH」の文字がパンチングの間に入っているのもオリジナルな仕様ではないですが、好きだった2000年代前半のチープなスタンスミスを懐かしめるディテールです。これは今でもヤフオクなどで見かけたら落札するようにしています。

 

で、今年の2018年製ですが、歴代で最もプレミアムなレザーを使いました。このスタンスミス人気に乗っかったあらゆるブランドから発売されるよく似た白スニーカーへの抵抗か、オリジンの矜持を感じます。レザーのライニングのヒールの形押しなど「スタンスミスより高級なスタンスミス」といったポジショニング。

 

これもまた、数年後に買っておけばよかったな、と後悔しないよう、購入しておきます。40歳になった今でも価値観の変容を楽しんでいるので。

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小澤匡行

MASAYUKI OZAWA

1978年生まれ、千葉県出身。雑誌『Boon』でライター業をスタート。現在は編集・ライターとして『MEN’S NON-NO』、『UOMO』(集英社)等のファッション誌やカタログ、広告などで活動。2016年に『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓、近著に『SNEAKERS』(スペースシャワーネットワーク)の日本語監修など。

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