Vol.3
このスニーカーを一見しただけで、欲しい!
と思った人は、きっと僕よりも年上か、同年代でしょう。
このモデルの何がスペシャルなのか。
リーボックを代表するモデルである所以はどこにあるか、それはデザイン以上に、生産国です。
1993年、アウトドア用のサンダルとして誕生したビートニック。ちなみに昔の表記はビートニクでした。
これは1950年代に沸き起こったアメリカの文学啓蒙運動のBEATNIK(ビートニク)と同じスペルだったから。
このモデルがそこに関係しているか、昔何かエピソードを聞いたか文献を読んだ気がするのですが……。
いずれにせよ、1993年は、スポーツメーカーのサンダルの当たり年でした。
ナイキもacgをいよいよ本格的に展開し、テバのサンダルがヒットしたりと、アウトドアが世界中で流行しました。
コールマンが日本に進出したのも、93年です。ビートニクは、当時日本では正式販売されず、嗅覚の鋭いバイヤーたちがアメリカから買い付けて売っていたそうです。
それゆえ、着用者も感度の高い人たちで、一般的に流通するモデルではなかったとか。
僕もその頃は中学生で、知る由もなく、存在を知ったのは2000年に差し掛かった頃のこと。
アディダスのクロッグサンダルがイタリア製だったり、このビートニクがブラジル製だったり。
革靴ともとれるスウェードのサンダルが、意外な生産国であることに話題が集まりました。
こういう情報に価値を見出していたのは、スニーカーヘッズよりも、ビルケンシュトックやアイルランド製のクラークスといったスウェード靴を洒脱に履きこなしていたヴィンテージ好きやビームスやユナイテッドアローズなどセレクトショップのスタッフだったような。
また、当時、裏原宿系のデザイナーたちが、事務所で室内履きしているのをみて、憧れたものです。
実はこのビートニク、2002年頃に一度復刻しています。
オリジナルカラーである茶と黒は即完売したのですが、その後に発売された新色がいまいちヒットせず、ワゴンセールで購入した記憶があります。
おそらく、そのビートニクは、革靴の延長線上では捉えられないカラーだったからではないでしょうか?
なぜブラジル製なのか。
それはシャークソールに使われている天然ゴムの生産背景でした。
その後、セレクトショップやスニーカーショップからの復刻や別注のオファーが絶えなかったようですが、どうやらその提携工場が破綻してしまい、よそで再現ができなかったため、実現できなかったそう。ゴムの比率など、細かいレシピが当時はあったと聞いています。
それが今になって、経緯こそ不明ですが、復刻できるようになったとか。
今回も、無事ブラジル製でリリースされています。
センターのクリースや大胆なソールのデザインは、93年のオリジナルと見比べても、随分と忠実に再現されています。
今年はまたサンダルブームだそう。テバやチャコなどのストラップサンダルの二足めとして、かつ革靴っぽい雰囲気で装いたい人には、スポーツメーカー製である固定概念を取っ払って、茶系を履きこなして見るのも良いのでは?
また、この絶妙なボリューム感を生かして黒をモードに履くのも新しそう。
何より知る人ぞ知る、というより年配系(もう自分もそこに属すのか……)には偉大な価値を持つブラジルメイド、それがビートニックです。
小澤匡行
MASAYUKI OZAWA
1978年生まれ、千葉県出身。雑誌『Boon』でライター業をスタート。現在は編集・ライターとして『MEN’S NON-NO』、『UOMO』(集英社)等のファッション誌やカタログ、広告などで活動。2016年に『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓、近著に『SNEAKERS』(スペースシャワーネットワーク)の日本語監修など。
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