Vol.4
NIKE SPORTSWEARのAIR MAX 270 FLYKNIT
ナイキのエア マックスシリーズは、1987年に初代が発売されて以来、ほぼ年に1モデルのペースで新作を発表しています。
モデル名の末尾に年号がついたのは、エア マックス95以降の話。それまでは、毎年ただの「AIR MAX」でした
(一部例外を覗く)。
進化の系譜を整理するために、僕が後に門を叩く今はなき「BOON」の偉大な先輩たちがつけたことで、ナイキに実際に採用されたとか。その話が真実か否かは別としても、年代ごとにモデル名が、
このモデルのようなハイブリッドは生まれなかったのでは?と思うわけです。
このAIR MAX 270 FLYKNITは1991年に発売されたAIR MAX 180とAIR MAX 93のエアユニットを融合した、
新しいデザインです。
前年のAIR VAPOR MAXに比べるとソールの斬新性は薄まりましたが、ナイキの悲願であった「ソールがすべてエアである」ことより、ボリュームの容量を重視したモデル。
進化の系譜に位置するより、映画でいうところの特別編というか、
ディレクターズ・カットというか、そんな立ち位置にあると思っています。
なぜ、270なのか、それはベースモデルのAIR MAX 180のネーミングが関係しています。
基本的に末尾が発売年の下二桁であるにも関わらず、この名前はAIR MAX 91にはなりませんでした。
それは、発売当時から、エア マックスの直系の先を行くモデルとして、AIR 180と名付けられていたからです。
それまでのサイドビューのエア窓をアウトソールからも覗かせることに成功し、エアの容量は約50%も増大しました。
180は、エアが見える面積を示しています。そして、別に「AIR MAX 91」は存在していました。
しかしそれが翌年もリリースされ続けたロングセラーになったので、結果的に「AIR CLASSIC BW」となりました。
ご存知の方も多いかと思います。
ちなみに「AIR 180」は、2013年の復刻の際に正式なモデルが「AIR MAX 180」となっています。
そして「AIR MAX 93」は、180よりさらにエアの容量が増え、面積は270度まで広がりました。
本作は、そのボリュームの革新性を、最新のフライニットアッパーを用いることで、今に伝えています。
1990年代初期、それなりに陸上少年だった自分は、AIR MAXをランで履くという発想はまるでなく、ちょっとしたアップやジョグでゆっくり走る時のものでした。
だから機能がどうこうよりも見た目のかっこよさ、が欲しい動機でした。
リアルタイムで手には入れられなかったけど、
AIR MAX 93は初めて欲しいと思ったエア マックス。
そのルックスは大きく変わっていますが、そこかしこに懐かしさを感じます。
復刻じゃないのにクラシック、その微妙なポジションが大きな魅力です。
小澤匡行
MASAYUKI OZAWA
1978年生まれ、千葉県出身。雑誌『Boon』でライター業をスタート。現在は編集・ライターとして『MEN’S NON-NO』、『UOMO』(集英社)等のファッション誌やカタログ、広告などで活動。2016年に『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓、近著に『SNEAKERS』(スペースシャワーネットワーク)の日本語監修など。
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