Vol.9
もともと、アスリートのアフタースポーツ用に開発されたシャワーサンダルは、
文字の通り不衛生だったスポーツジムのシャワー室で履くためのものでした。
自分も、過去にランニングステーションやジムで軽い水虫に感染したトラウマから、
シャワー上がりに脱衣場とかを歩くのが不安で、すぐに予防薬を塗ったり、
実際に室内用サンダルを着用しています。
今ですらこうですから、昔はさぞ汚かったことでしょう。
実際にシャワーサンダル人気を二分するアディダス オリジナルスのアディレッタは、
選手たちのリクエストから1972年に生まれました。ベナッシの正式な誕生年はわかりませんが、
そう遠くない後かと思います。
この普遍的なベナッシが現在、ファッションアイコンとなっている理由は、
インスタグラムとの関係が深いと思っています。シャワーサンダルがブームになったのは2015年から。
クッション性の高いフッドベッドなど、履き心地の良さはさることながら、
一番の魅力はストラップのロゴにあります。
インスタグラムの利用者数の増加に伴い、ロゴブームが訪れました。
とあるリサーチ会社によると、2013年にMAU(月間アクティブユーザー数)が1億人を突破してから、
わずか5年で10億人に増加しているとのこと。
そして、最初は年間1億人ペースだったのが、2015年から2億人ペースで伸びています。
ことファッション業界において、スニーカーはとてもアイコニックな存在、
そこにわかりやすいロゴが拡散に拍車をかけ、
ベナッシは瞬く間にアフタースポーツ用から
タウンユース用になりました。
また、もっとも利用者が多いのが20代女性であったこと、そしてベナッシの価格帯が5000円以下と、
スニーカーに比べても安いことなど、複合的な理由が重なり、女性を中心にムーブメントが
高まりました。
ちなみに空前のスニーカーブームと言われ始めたのも、2015年でした。
ある程度、年齢を重ねるとシャワーサンダルは至極シンプルなもの、という認識でしたが、
若い世代には主張できるアイテムです。
コーディネートの外しに使ったり、
今では左右非対称のカラーやリッチな素材を使ったものなど、
バリエーションが増えています。
どうしてもスニーカーの投稿となると、足元をフォーカスした写真ばかりで
「何を履いているか」ばかりが
注目されがちですが、
ベナッシは定番であり、スタイリングアイテム。
ぜひソックスやボトムスやスカート、
そしてトップスまで色合わせを楽しんで、
全身の写真を投稿して欲しいです。
おしゃれな魅力をより多くの人に拡散してください。
小澤匡行
MASAYUKI OZAWA
1978年生まれ、千葉県出身。雑誌『Boon』でライター業をスタート。現在は編集・ライターとして『MEN’S NON-NO』、『UOMO』(集英社)等のファッション誌やカタログ、広告などで活動。2016年に『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓、近著に『SNEAKERS』(スペースシャワーネットワーク)の日本語監修など。
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