Vol.7
AIR MAX95の登場で、ソールのエアがヒールだけでなく、フォアフット(前足部)もヴィジュアル化したように、90年代のハイテクスニーカー事情、とりわけナイキにおいてはエアがどれだけ可視化できるかに焦点があてられていました。
つまりそれは、見た目がどんどん斬新になっていく、それに伴いアッパーも奇抜になっていく方が、バランスがとれて見える、というのがこの時代の判断だったと思います。
前へ前へという意気込みが、ブームを盛り上げと思います。しかしながら歴史を美化することは簡単であり、すべてのモデルがヒットした訳ではなかったのもまた事実です。
1997年に登場したAIR MAX 97は、それまで前足部とヒールで分割されていたエアを一体化させ、中足部まですべて可視化することに成功しました。
個人的にはソールが薄くなった気がして、AIR MAX 95よりもクッショニングが固い記憶がありますが、実際のところはどうだったんでしょう?
新幹線をイメージしたと言われる流線型のシルバーのアッパーは、近未来デザインと呼ばれました。
ちなみに近未来とは、当時における近代建築やテクノロジー、ガジェットを連想させるメタリックな質感のこと。
無機質なヴィジュアルは、20世紀における進化の象徴だったのです。実際、Appleのデザインもそうなっていきました。
一方で、AIR MAX 97と同じエア ユニットを使ったAIR MAX 98は、無機質どころか、歴代でもっとも奇抜なパーツを用いたデザインでした。
当時はとても扱いにくい印象を与えてしまい、世界的に売り上げは落ち込んだと思います。
流線的な切り替えは踏襲しながら、左右非対称であったり、後から貼り付けたようなスウッシュの位置だったり。
とにかくデザインから受け取れるスピード感はなくなり、重たく見えるようになったのが、低迷した理由ではないでしょうか。
そして同年にはAIR MAX 120やAIR MAX PLUSなどが立て続けにリリースされ、単一モデルへのインパクトが薄かったことも付け加えておきます。
このいなたさい甲殻類のようなボリューム感に目をつけたのが、2016年のシュプリームでした。
それまで歴代のヒットモデルを使って別注できることがシュプリームのステータスだと思っていましたが、初めてピックアップのセンスに驚いたモデルです。
しかも偶然か、シュプリーム別注のカラーブロックが今もなお人気の高いAIR JORDAN 11に雰囲気が似ているように感じました。
ここあたりから、今になってAIR MAX 95以降の「当時の評価が鳴かず飛ばずだったエア マックス」が注目され始めたように思います。
先にも書きましたが、この重たいルックスこそが、AIR MAX 98の魅力。
このボリューム感を、細身のパンツで際立たせてもいいし、ワイドパンツと調和させるのもいい。
とにかくスタイリングを新しい印象に変えてくれます。ランニングシューズと思わずに、バレンシアガやグッチなどのDAD SHOESと呼ばれるボリューム系と同枠に考えるのもありかもしれません。
価格も手頃なので(メゾンのそれに比べると)いいエントリー感があるのでは。
特にウィメンズでも最近はAIR MONARCHやM2K TEKNOなどが発売日に売り切れるような状態。
その流れを作ったとも言い切れるAIR MAX 98を履いていたら、スニーカーヘッズからの評価も高そうですね。
小澤匡行
MASAYUKI OZAWA
1978年生まれ、千葉県出身。雑誌『Boon』でライター業をスタート。現在は編集・ライターとして『MEN’S NON-NO』、『UOMO』(集英社)等のファッション誌やカタログ、広告などで活動。2016年に『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓、近著に『SNEAKERS』(スペースシャワーネットワーク)の日本語監修など。
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